「お願い。刺されて、僕に殺されて、それじゃ、なきゃ一緒、に、いられ、な、いッ!」
「落ち着け恭弥!」
「一緒に、いたかったのに、なんで変わって…、だから楽園に」
 
     帰りましょう



     箱舟に囚われて



   『恭弥、俺結婚することになった。』
   『…そう、おめでとう。』



こんなやり取りがあって二週間後、俺は恭弥に刺された。
多少なりとも縋ってくれるだろうかと考えていた俺はとことん馬鹿だ。
何も言わず、恭弥は仕事仲間としての位置にすんなりと戻ってくれた。
男同士じゃ、子供できないし仕方ないよね。そう言って。
…寧ろすっぱりと切れなかったのは俺の方だ。
気になってしまいちょくちょく様子を見に行ったり。
恭弥がまだ俺のことを愛していると知っていたのに。
結婚するのは本当だったけど、俺は俺の気持ちに嘘をついた。

   (きっと俺の為に、突き放してくれた)
   (そして別れからも傍で支えてくれた) 

恭弥のことも考えずに、心地よい距離に甘えてしまった。
別れてからも会ったりはしてしまっていたんだ。


壊れた思いに縛られたままに、
無理に恭弥が描いた新しい世界、
彼が踏み込んだ楽園は、
信仰という狂気。

それは俺が帰るときだった。

   「じゃあな、恭弥。また来るから。」
   「お願い。 …ディーノ、僕に殺されて!」

恭弥は<Ark>と言うナイフを愛しそうに握りしめていた。
腹に刺さる傷が無償に愛しくて甘かったことを覚えている。
ぎゅっと目をつぶってナイフを操る姿が、出血よりも痛ましくて。
立ってるのが辛くなったから、恭弥に抱きついた。

   「一緒に、いたかったのに、好きだったのに、


             だから僕は、ディーノをこの手で――――――」


   「愛してる、恭弥。」
   「ねぇ、僕は愛してくれる人を殺すの…?」



                                     <いやだよ、そんなの>



   「バイバイ、ディーノ…。」
   「恭弥ッ!!」


彼の胸はナイフの鞘か。
なんの抵抗もなく切っ先を心臓へと招いていく。
俺を見て笑った、そして崩れ落ちるのは一瞬の出来事だった。










さぁ、楽園へ帰りましょう。