「メリークリスマス!」





弾けるクラッカーは、疲れていたから騒がしく感じた。
クリスマスの夜にスィートルームを予約するのはどれくらいお金がかかるのか、僕は知らない。
ただ、この金髪の男は一般的には難題と言われることすらやってしまう。
だって、やっぱり僕はクリスマス当日スィートルームにいる。
多すぎる部屋の数、華やかすぎる装飾、大きすぎるキングサイズのベッド。
シャンパン(ディーノの)とシャンメリー(僕の)がつがれたグラス。
宝石のような夜景を独占できる素敵な夜。
…しかし目の前には高級ホテルには似合わない、ぐちゃぐちゃなケーキ。
それは去年、僕から顔面ケーキをくらったディーノが、今年こそはと立てた計画のせいだ。

「恭弥、美味いか?」
「…買ったほうが美味しいよ。」

もぐもぐしながら答えると、やっぱりなとディーノは笑った。
当たり前の話だ、一流のシェフを舐めちゃいけない。
だってこれはケーキの作り方なんか分からない僕とディーノで作ったんだから。
彼の作戦はこうだった。
去年は僕もディーノもケーキを用意しかたら、喧嘩になった。
なら、二人で作ればいいじゃないか!
…実に単純で色々と問題があるけど、ディーノはこれで上手くいくと思ったんだろう。
日頃から作る人ならまだ上手く形にするだろうが、やはりそうはいかない。
結局、僕が骸にメールや電話を送ってなんとか完成に至った。


To:骸
From:雲雀
ケーキどうやって作るの?

To:ヒバリ
From:ムクロ
は?


こんなやり取りが何通もあって、どうにか完成した。
認めたくないが骸は甘いものが好きみたいでよくお菓子を作っている。
電話をしたときに後ろから沢田綱吉の声が聞こえた気がするが、まぁいい。
不釣りあいなケーキを前に、今年はちゃんとクリスマスをしている。

夜景が見える部屋で、テーブルで二人向かい合って喧嘩もせず談笑なんて。
…部屋の照明は落ちて真っ暗なのにキャンドルだけが揺らめくのは、なんかロマンチックだ。
ディーノの髪の毛がいつもより暖かい色に見えて、それが似合ってると思う。
ぼんやりと優しい光、はっきり言うと見惚れていた。

「クリーム付いてるぞ、恭弥。」

ぼーっとしていると頬をするりと指で撫でられる。
ついでにくわえっぱなしだったフォークも取り上げられた。
触れられたところがやけに熱く感じる。
…暗い部屋の中で、ディーノの顔がとても――――




「…きれい、」

思わず口にした一言。
それは、まず目の前の男を赤く染めた。
そして、次に僕の頬も赤く染め上げる。
恥ずかしくなって顔を背けると、腕を捕まれた。
ディーノが「堪らない」と言った表情で近づいてくる。
僕を写すギラギラした目に、「キスされる」と直感した。

ガタンと椅子から立ち上がると振動でふっと蝋燭の火が消える。

「電気付けてくる!」

真っ暗闇の中で引き寄せようとする腕をほどいた。
何も見えない中踏み出した一歩。

「だーめ。」

しかし両腕で後ろから抱きしめられた。
耳に熱い吐息がかかる。
暗いから分からない。ディーノが何をしているのか。
僕に何をしようとしているのかは少し予想できるけど。
引き出されたワイシャツから長い指が侵入する。
手のひらで胸を撫でながら、脇腹を指先で弄ぶ。
脱け出そうとするけれど、首筋から耳まで舐められ更に甘噛みまでされて無駄に終わった。
感じて身動ぎをする僕をみて、彼の鼓動が激しくなったのを背中で感じる。
…興奮してるのかな、ディーノも。
熱い舌が耳に入りこんだ時、僕は限界を迎えて床にへたりこんだ。

「恭弥、ベッドがいいか?それとも此処でいい?」

肩で息をする僕を性急に押し倒した彼は、けっこうスイッチが入ってしまってる。
床の上で僕のシャツのボタンを乱暴に外したあと、まどろっこしいらしく自らもシャツを捨てる。
バサバサという衣擦れの音が、とても欲望をそそった。
見上げるとそこには僕に飢えた獣しかいない。
暗闇の中で、視線だけがぎらついている。

「スィートルームに呼んでおいて、…ベッドは綺麗なままで朝を迎えさせる気?」

上気した顔を向けるとまた「堪らない」という表情。
覆い被さる男は、珍しくニヤリと企むように笑って軽く僕を抱き上げる。
と、呟くような低い小さな声がした。



「…ぐちゃぐちゃにしてやるよ。」



また一つ、僕の心臓が跳ねた













今日、僕は彼へのプレゼント