think sink
思い沈んでモラトリアム
考えて考えて考えて考えて、沈んでいくように僕は決めた。 僕は決して、好きにならない。 好きになどなるものか、僕が。 そう決めて、僕は屋上にいる。 「好きだ、恭弥。」 「きっと誤解だよ、それは。」 屋上で二人、何度も何度も対峙した。 痛みも覚えた。貴方の鞭の皮膚を焼くような熱さの痛み。 腕を締め上げる動物の革に、屈してもいいかなと思ってしまった。 スリルも覚えた。ギリギリは何よりも楽しい。 僕と貴方の血の香りが混ざって、ちりちりと胸の奥を燻った。 だからこそ、僕は惑わされない。 知っているんだよ。ちゃんとそれは誤解だって。 貴方はそんなの知らないみたいだけれど。 まったく人間は愚かな生き物だよ。 自分の気持ちなんてすぐに見失ってしまう。 「人はね、スリルと恋愛を区別できないんだ。」 だから誤解なんだ、そう僕は貴方の腕の中で呟く。 心臓が鳴る。 違うリズムで抱き合う貴方の心臓もなっているのに気が付いた。 きっとこれは警鐘だろう。 惑わされてなるものか、僕が。 「恭弥は俺のこと、好きじゃない?」 「戦ってスリルを共有してるからそう思うだけでしょ。ディーノ、貴方は間違っ そこまでしか言葉を許してもらえなかった。 純真でいて純粋で純情な金髪が僕の唇を捕らえていた。 深く息の上がるようなものじゃない。 ただ唇と唇を合わせるだけのもの。 無駄に整った顔が近い。睫毛長いな、なんて眺めていたのは、 目を瞑る余裕なんて僕には少しもなかったから。 離れていくとき、名残惜しく思ったのは何故だろう。 その腕はまだ僕を離さないで、耳元に囁く。
「戦ったことのある奴、全員好きになるわけなんかないだろ。」 「でも誤解で、貴方は間違ってて、だから僕も」 「恭弥!!」
目を、目を合わせられた。 逃げるなと、言わんとする目を合わせられた。 僕だって考えたんだ。落ち込んで、沈みこんだ。 貴方だけ真っ直ぐなのは、酷く… ずるい。 青い空を自由に浮かんでいたいのに、 なのに、貴方のせいで僕は重く沈む 僕ばかり立ち止まってしまう。 けれど、 「本当のこと言って、な。大好きだから。本当に大好きだから。」 「……長いキス、して。」 貴方の目に写った僕が恥ずかしそうだけど、幸せそうに見えたから 抱きついて目を合わせたまま近づきたくなった。 そして時は止まる。
『一時停止』
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