どーも、鳥です。
ヒバリさんのお世話になってます。
ぴーぴーうるさいとはよく言われますが、こんな僕と群れてくれるヒバリさんが大好きです。
学校だって、いつも一緒だもん。
あ…、足音。




もって行こ もって帰ろ




「恭弥!!今日も修「やだ。」

ガラッと乱暴に扉が開いた。
この部屋に、こうやって入ってくる人なんか一人しかいない。
…ディーノさんだ。
飛んでいって、僕はディーノさんの周りをバサバサ。
そう、ヒバリさんが嫌がることは是非ともやめて頂きたい。
それにディーノさんと一緒に屋上に行くときだけ、ヒバリさんは僕を連れてってくれない。
危ないからダメと言うから、応接間で僕はいつもお留守番。
それ以外は大体一緒にいられるのに!!

ディーノさんは僕のライバル…
そう意識してから、フードについたもふもふのファーを、むしむし啄ばむのが最近の日課となった。
髪の毛を毟り取ってるわけじゃないんだから、その辺は感謝してもらいたい。
困ったような顔はするけれど、追い払わないディーノさんはその辺を弁えているらしい。
いつか全部むしりとってやるんだ。
一心不乱にむしっているとディーノさんの視線を背中に感じた。

「あー、お前も恭弥に似て凶暴になったんじゃ…」
「うるさい。ディーノなんかのとこじゃなくて、こっちおいでよ。」

ふと、啄ばむ口ばしを止める。僕の眼下にはヒバリさんの肩。
ヒバリさんが呼ぶから、僕は彼の肩の上へパタパタと滑空。
ここはとっても心地がいいから。
ワイシャツの硬い生地も、暖かい首筋も、たまに触れる黒い髪も。
ぜんぶぜんぶ、僕は好き。

「あ、恭弥。これお土産。」
「ドーナッツ?」

思わず擦り寄っていると、話の輪から追い出されていた。
…ディーノさんが持ってる紙袋から、とっても甘い匂いがする。
ん〜、吸い込むとほわほわした気分になる。
なる〜。なる〜…

「なんでディーノの方に行くの?」

ふはっ!!
見回すと、ディーノさんの手の上。
思わずふわふわとドーナッツに行っちゃったぁ!
ヒバリさんの肩に止まって、ぴーぴーさえずる。
僕なりのゴメンナサイのつもり。
だって気になったのはドーナッツだもん、ディーノさんじゃない。
そしたら黙ったまま、笑いかけてくれた。

「こっち座れよ、恭弥。」
「…僕のソファーだけどね。」

ちゃっかり応接室のソファーに座ってるディーノさん。
ガサゴソと紙袋を開けて、テーブルの上に色々並べてる。
ドーナッツにパイ。ざっと見て10個くらい。

「恭弥は何食べるか?」
「これ食べる。」

ヒバリさんが指差したのは、パイ。
甘そう。カスタードパイかな。
食え食えって、ディーノさん終始にこにこしてるし。
なんか僕がエサを食べてるときのヒバリさんに似てる。

「ディーノは、食べないの?」
「ん?あぁ、俺は別にいいよ。」

両手でパイを持って食べる仕草は、僕たち動物と近いものを感じる。
…なんて言ったらヒバリさんは怒るだろうけど。
僕はパイのかけらを頂こうと、とりあえず肩からおりた。
こんなにいっぱい、ヒバリさんだけじゃ食べきらないのに。
ディーノさんはいらないみたいだ。
持って帰ってくれないかなぁ。
かけらだって、こんなに美味しいのに。

「これ、もういらない。ディーノ食べて。」
「え゛!」「ピィ!」

思わず鳴いて違う声がしたから横を向くとディーノさんと目が合った。
同じような顔をしている。僕と同じ、金色をしてる。
くすくすという声がしたから視線をずらすと、珍しくヒバリさんが笑っていた。

「分かった、ちゃんと持って帰るってば。」

そういって残っているドーナッツを全部また紙袋にしまう。
右手にそれを持って、ソファーから立ち上がった。

「恭弥?」
「修行はお休み。持って帰って温めるから。 …貴方も来るでしょ。」

言いながら僕のこともそっと手のひらですくってくれた。
右肩に僕。左側にディーノさん。もう夕方だ。おうちに帰ろ。

「よーっし、じゃあ恭弥ん家だ!!」





もうちょっと、一緒にいたいとき。遠回りして帰るとき。
もって行こ、もって帰ろ。