愛しい人と初めて過ごすクリスマスは―――――
「……ばかっ!」 「わ、え゛、ちょっと恭弥!」
…嵐から始まりました。
Xmas!
恭弥のケータイに、今から迎えに行くとメールしたのが5時ごろ。 どうせいつものホテルでしょ、一人で行くからというメールが帰ってきたのが5分後。 …いつもなら自分から迎えに来いって言うくらいなのに。 なぁんか変だなと思いながら、待ってたわけ。 色んな種類のケーキもセッティング完了。 何回かこけそうになったりしながらも無事に終わった。 そしたら足音が部屋の前で止まって、チャイムがなった! こんなためらったチャイムの鳴らし方、恭弥だけだ。 ドアの向こう側を想像して、頬が緩んでいる俺は相当末期かもしれない。 早く会いたいから、誰かなんて確認もしないで飛び出した。
「恭弥ぁぁ!今日は一人で来るなんて、どうしたんだよ?」 「…別に。あ、あの… ディーノこれ…」 「ジャーン!恭弥、何が好きか分からないからいっぱい用意したんだぜ!」
何故か入口でしどろもどろしてる恭弥。 とりあえず部屋に引きずりこんで、ソファーに座らせる。 テーブルには色とりどりのケーキたち。 俺はもう最上級の笑顔。 何だかうつ向いてる恭弥。
「恭弥??」
様子がおかしい恋人に声をかけると、がばっと顔を上げた。 何だか拗ねた顔をしてるなぁなんて思った瞬間。
「………ばかっ!」
罵声と共に飛んで来たのはテーブルの上のケーキ。 30センチくらいの距離からのフルスイング! “毒サソリビアンキ”と似てる気がするくらいの絶妙な動きで俺の顔半分にヒット…。 見事、ソファーに倒れる俺。 でも倒れてるばっかってわけにはいかないからとりあえず起き上がる。 ああ、顔が甘ぇ…。
「ど、どうしたんだよ恭「黙って!」
恭弥を視界に捕えたと思った瞬間に世界が白くなる。 ベチャって音がした。 顔面で。二回目の攻撃はクリーンヒットという結果に終わった。 息を吸うと、嗅覚が全部クリームに支配される。 ふぎあぁぁあ、キモチワルイ!!
「きょ、恭弥あぁ…」 「……っ。」
あっコイツ、無言でスポンジぐりぐりしてる。 …何かの罰ゲームか。俺なんかしたっけ? とりあえず恭弥の気配が消えたから、急いでスポンジを取る。 本当、ハンサム(めっちゃ自称)な顔が台無しだよなぁ。 手で擦って、とりあえずだけど生クリームを落とす。 (ベタベタ感は全然落ちてくれないけれど…。) すると、向かい側のソファーに座り込んだ恭弥と目が合った。
…そーとー怒ってる?? 機嫌を伺うように見ていたら、また何か投げられた。 今度は何だと思ったが、ばさぁと頭に乗せられたのはバスタオル。 さっき気配が消えたのは、これを取りに行っていたかららしい。
「せっかく僕もケーキ買って来たのに!!」 「嘘ッ!?」
真っ赤になって叫ぶ恭弥なんて始めてみたよ神様。 ばっと振り返って見てみると、テーブルの隅にこじんまりと置かれた白い箱があった。 そんなに大きくはない、ケーキの箱。
「開けていいか?」 「ディーノのケーキの方がおいしいでしょ。」 「そんなことない「なくない!」
あぁ、それで拗ねてんのかコイツは。 でもわざわざ一人でケーキ、買ってきてくれたのか。
「一緒に食べようぜ、恭弥のケーキ。俺には一番うれしいプレゼントだ。」 「…受け取ってくれて、ありがとう。」
「でも食べる前に、その顔どうにかしてね。」 「恭弥のせいだろ!!」
パイゲームは恋の味
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