絶対に、いつか僕の手で咬み殺す
僕をあんな風に扱ったのは後にも先にも骸だけ
骸、骸骸骸ム ク  ロ   む  く   ろ   ―――――――
ゾクゾクするよ、君の不敵な笑みを僕の手でぐっちゃぐちゃにするんだ
心臓にドクドクと血が送られていく
身体が何故か震えた。どうしてだろう
こんなにもおもしろいのにね、ふしぎ
毎日ヒトリでいるは退屈だったんだよ
君なら僕と遊んでも壊れないでしょう
そうしたらもう退屈しなくてすみそうだ。
吐き出した吐息が笑う、飛び跳ねる含み笑い
息が苦しいよ、全て吐き出してしまおう

「…っあはははは!!ムクロ、僕はね僕はッ」






     U.N.OWEN






後のイタリアンマフィア界で名を馳せる男の誕生だった。

「…ヒバリさん、また一人で行くんですか?」
「そうだよ。骸の事を知ってるかもしれないだろう。僕が直接聞かないとね。」

ボンゴレの屋敷の出口。
扉に手をかけた彼に沢田綱吉は声をかけたが、返ってきたのは至極普通な返事。
単騎突撃を当然だと言い、ボスからの『命令』を頂くだけ頂いて彼はまた戦地へ赴く。
…無理矢理奪い取ったと言っても良いくらいだ。
ボスに背を向け、床をカツカツと踏み鳴らし、大扉を乱暴に開いて出て行く。
身に纏う服装は違えど、戦いに楽しさを見出すのは変らない。
『不良の最終形態』と恐れられて学校を支配していたときと。

「あーぁ、ヒバリさん今日は何人かな…」

バンッと派手に開け放たれたドア。
彼のボスはドアの向こうを見てため息をついた。
スーツのポケットからおもむろにケータイを取り出す。
慣れた手つきでアドレスを選ぶと、スリーコールで相手は応じた。

『あ、もしもし。悪いけど、ヒバリさんの出した死体の処理、よろしくね』

ピッ。通話を切ってまたため息。
彼のストレス解消、悪い癖、遊び方は直りそうにない。
今日も彼はテーマパークに行く子供と同じ心持でいることだろう。
幸せが逃げるなぁ、そう思っても止められないため息をまた一つついた。






「沢田綱吉の言うとおり、かな」

目をぎらつかせたまま口元には至極楽しそうな笑み。
自分一人とあとは果てもなく『エモノ』しかいない空間、そう一人ぼっち。
抑塞するカゴメカゴメ。
トンファーを握りしめてまたニヤリ。
エモノもニヤリとしていた。
そうだろう、薄暗い倉庫に味方なんて一人もいない。
…カツカツカツ前方に、最初は歩いて、次に走って。


「君たちは僕と遊んでくれる?」


一人目を思いきりなぎ倒した瞬間、愉快なショーは始まった。
二人目と三人目はナイフだった。
キシンッと刃を弾き飛ばしてから地面に叩き伏せる。
ついでに四人目の顔面をサングラスごと蹴り壊す。
ぐしゃりと音がする。
四人目にぶつかった五人目をトンファーで殴ってどける。
骨に響くにぶい音。
振り向きざまもう一振り、二振り。
途中で刃を出して切り裂いてゆく。
殴るたびにダイレクトに腕が痺れるのが堪らない。
十三人目はガトリングを引っ張りだしてきたから速攻で消した。
奪いとってハッピートリガー、ずっと撃ちっぱなし。
ダダダダダダッダダダ
轟音と煙と恐怖が空間をあっという間に支配する。
腕を伝って体中に伝わる銃を放つ衝撃。
やっぱり面白くない。もう人数も分からないし。
すぅと息を吸うと猟奇的な甘酸っぱい鉄の誘惑。
次のはスーツから銃を出そうとしたから、先に撃った。
派手に血が散る。
芳醇なクランベリーのような。
とくとく滴る甘い罠。
どんなに殺傷能力があっても銃は当たらなきゃ意味がない。
トンファーに持ち変え間合いをつめどんどん裂いてゆく。
ただの鉄の棒なのにそうれは十分に害をなす。
たまに足元が滑るのは真っ赤な液体のせいだろう。
もう何人かなんて面倒になるころ、自然と笑い声が出てきた。

「アハハハハハッ、ハハハ」

乾いた唇を舐めると鉄の味がする。高揚感が堪らない。
足元で呻く声が聞こえる。
それは、ひどく怯えた目で見上げていた。
襟元を掴みあげて、問う。

「ねぇ、ムクロ知らない?」

答えはない。
耳障りな音でしかない、絶叫でしかない。
表情を変えずにもう一度、地面に叩きつけた。
カツカツカツ…
最後に一人残ったエモノを見据える。

―――――どうしてこんな、なんで、どうして、

うわ言を繰り返す相手にカチリと銃口を向けた。

「なんでって、存在証明だよ。」

破裂音と火薬の匂い。
生きているものが、違うものになる瞬間。
最後の一人も床と抱き合い、そして誰もいなくなった。










抜け出せない 恋の迷路