バリバリバリ…
去年はラッキーとはしゃぎながら沢山のチョコを頂いた。
バリバリバリバリ…
今年はビターな感情と戦いながら沢山のチョコをかみ砕く。
運のツキ
「雲雀さんに渡して!」
「オレが?」
クラスメイトからのお願い。
今年は何だかこれが増えた気がする。
オレがヒバリと仲良くなったからなのか、…仲良くって言ったら変だな。
義理だったり本命だったりなオレへのチョコに、ちらほら混ざるヒバリへのチョコ。
下駄箱にでも入れとけばいいのに何故かオレに託された博打のようなチョコ。
放課後、オレは珍しく部活をサボって屋上へかけ上がった。
一人分の足音だけが響き渡る異質な午後。
2月の寒空、誰もいない場所でカバンをひっくり返し、チョコを床にばら蒔いて座った。
オレの為でないチョコレートだけ。
ラッピングを破くビリビリと。
箱もこじ開けてズタズタに。
大きいチョコはバリバリバリ。
口の中で溶かしてしまえば、もうバレンタインデーの魔法は無効。
最後に『雲雀恭弥さんへ』と可愛く書かれたカードを読めなくなるまでビリビリと。
紙屑を屋上を疾走する風に投げつけてやれば始末完了。
それは桜のようにヒラヒラと舞っていった。
「何してるの。」
突然、声がして振り向けば雲雀恭弥。
ドアを開けた気配もなく屋上の壁にもたれている。
冷たい風がフワフワそよぐ。
「…戦利品の確認?」
果たしていつも通り笑えていたのか分からない。
見上げるとヒバリと目があった。逸らした。
ラッピングの包装紙が風に弄ばれる。
「“カード、見て貰えましたか”一体何のことだろうね。」
「さぁなー。」
ヒバリの髪の毛もフワフワ揺れてる。
ゾクゾクゾワゾワするのは自分。
次はオレの番だった。
「オレ、今日朝見たら下駄箱にチョコ一つもなかったのな。」
「さぁね。」
ふいに切れ長の目と視線がかち合う。
一度そらしてまた一度ぶつける。
繰り返してるうちにどちらとなくクスクスクスクス笑いだす。
座り込むオレにヒバリの腕が伸びてきた。
掴んで引き上げてもらって今度はオレの方が高くなる視線。
またぶつけあってクスクス。
自然に顔を近づけて、おでこごっちん。
悪戯するみたいに鼻にキスしてからほっぺた。
最後は顔を手で押さえてしっかり唇にチュー。
おまけに舌まで絡ませて、しっかりと味わう。
クスクス、ここまで来て二人聞くことは決まっていた。
「「チョコは美味しかった?」」
絡み合った舌は、酷くビターな味がした。
<犯人は証拠を腹の中に隠す>
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