――名のない手紙――



僕はまた手紙を書く。
真っ白い紙の上を、万年筆がインクで汚してゆく。



親愛なる君へ


元気にしていますか。
僕は元気にしています。

季節なんて早いものとはよくいったものです。
もう寒い冬になってしまいました。
そう、教団にも雪が積もったんですよ。
寒かったから溶けずに薄く積もりました。

…また窓を開けたまま任務に行ったでしょう。
窓の桟に雪が積もってしまいました。
僕がちゃんと拭いておいたので安心して帰ってきて下さいね。





早く帰ってきて下さいね。
いつまで僕が君の部屋の番をしなくちゃいけないんですか。
本だって少しずつ黄ばんでいくんですよ。
まだ君は読んでもいない本なのに。
埃からは守れても、時間の流れからだけは、どう頑張っても守れないんです。

そんなに難しい任務でもないと早朝に独り、出ていったのに。
僕にも言わないなんて、勝手すぎます。

無責任です。

何の為にゴーレムやファインダーがいるんですか。
せめて連絡くらいして下さい。
声を、声を聞かせて下さい。
妥協します、行方を教えて下さい。
こんなの、まったく君らしくありません。
僕らしくもありません。

全部全部、君のせいです。
だから、帰ってきたら言いたいことがたくさんあります。
全部反省してもらうには時間がかかるでしょうね。
だから、早く帰ってきてくださいよ…








それも許されないのなら――――







せめて、貴方の亡骸くらいは、抱かせて下さい。




水をすった便箋を、僕はまた君の机に届けた。
切手を貼っても届かない手紙を、また一通。