「料理が成功したんだ。フランシス、食うよな!なっ!」
「待て待て、それは去年だろ去年!」









 分かりやすいやつ









「あのさぁ、つくならもっといい嘘つこうよ。ねぇ。」
ギルベルトが昼間地獄を見たといって騒いでいたから家に呼んで、ケーキつくってやったんだけど。
しばらくしてから玄関のベルがなったので、洗いものの途中で抜け出す。
はいはい今行きますよー… がちゃりとドアを開けると、立っていたのはアーサーだった。
ものっそい、いい笑顔で!
そして手にした紙袋を突き付けて、食え!食え!と押し付けるのだこの料理オンチは。
この焦げくさいにおいを放つものを、食べたのか… ギルベルトのやつ。
とりあえず紙袋を取り上げてから、キッチンに戻って焼いておいたケーキを一切れ出してやった。

「ギルベルトに逃げられてへこんでんだろ、これ食べて機嫌なおそうぜ。ぼっちゃん。」
「…なんで知ってんだよ」

風のうわさでね、と適当に返しておく。
ここでアーサーと違って友達多いからとか言ってみろ、口にスコーンを詰め込まれる。
ダイニングキッチンごしにアーサーをみると、口はへの字なのに目がらんらんとしていた。
…分かりやすいやつめ。
いや、分かりやすいと思えるぐらい長くいただけかもしれない。
エプロンで手を拭いて、隣の椅子に腰かける。
俺のことなんて気にすることもなくフォークは動き、むぐむぐ頬張るのも止まらない。

「ぼっちゃん、お味はどーよ」
「ぼっちゃんじゃねー… 」
「じゃあ、アーティ。美味し?」
「…まぁ、悪くはねぇよ。かかってるソース、結構うまかった。」

ぺろりと平らげてから、もう少し大きくてもいいのにという不満は頂いたが気にしない。
指で皿のソースをなびこるのはお行儀が悪いけど、素直だからよしとする。
もっと食べたいなんて、料理人にとっての最上級の殺し文句。
本人に行ったら照れ隠しの暴力が待ってるから、心にありがたく頂戴しておこう。
右手を捕まえてソースを舐めていたひとさし指をざらり、うん我ながら今日のはいい味だ。

「なんだよぉ、おまえ」
「ケーキのお代はくれないの?」
「…、ソファやだからな。ベッドつれてけ。」
「あれれ、俺はキスぐらいでよかったんだけど?」

なんて心にもないことを耳元で囁くと、とたんに顔を真っ赤に染める分かりやすいやつ。
照れ隠しに暴れ始めた体をぎゅっと捕まえて、寝室に押し込んでしまえばこっちのもの。
バタンと閉まる音がしたら、さっきのは嘘だよとリップ音と一緒に優しく言ってやればいい。



「お兄さんのケーキは、キスよりもっと高額だからね」



口に入れるのは、気をつけなさいよ。かわいいアーティ。




「ぼっちゃん」って呼ばせるのが好きです(*´∀`*)
あとアーティはアーサーの愛称らしです、かわいい!
本家さまのエイプリルフールに便乗してみました。

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