“どうせ君のことだから暇だろう?”
とか言って押しかけてきたり、逆にひっぱり出されたり。
あいつはいつも相手の都合ってものを考えない。
で数日前、またこんな会話になり
“今日はフランシスと会議あるから”
と、突っぱねたらしょげてしまって。
あまりにもしょんぼりしてるから、
“前もって言えば一日空けといてやる”
って、言ったら飛び上がって帰って行った。
…こういうところは、まだまだ子供っぽいんだよな。

「えぇ、アーサーさん。盛大なのろけありがとうございます。」
「へっ??」



 午後三時



「で、そのデートの日取りはいつになったんですか?」
「き、菊、そのデートってわけじゃ…」
「もう今更ですよ、そんなの。で、いつなんですか?」

いまごろ上司たちは仕事中なんだろうけど、やることが終わった俺と菊は暇なわけで。
菊の家にお邪魔して、縁側でガーデンパーティーの真っ最中だ。
“そんなたいそうなものじゃありませんよ”と言われたが、立派なパーティーだろ。
グリーンティーと、お茶受けの羊羹と最中、派手じゃないが細やかな庭園。
で、たわいもない会話をしていたらいつのまにかこんなことになってて。
着物からすっと日本製のボイスレコーダーをしたたかに取り出すあたり、そうとう腹黒い。
でも嫌いじゃない。数少ない俺の友人の中でもきっと一番だと思う。
…アル絡みでなければ。

「三日後。あいつ一ヶ月も前にわざわざ手紙で招待状だしてきてさー。」

さすがにかしこまりすぎだろ?
なんだか、ほほえましいですね。
菊が口元に手をあてて、くすくすほほ笑んだ。

「いつもの突然はじまるデートはどんな感じなんですか?」
「前日に連絡があればいいほうだ。」

あいつん家だったら、あいつずっとゲームしてるな。
暇だから俺がスコーン焼くと、あからさまに嫌って顔するし。
でも外に買い物行こうとすると、ゲームやってても止めにくるし。

「……脇見ゲームとか腹かっさばけや、あの若造。」
「菊?」
「いえ、どうぞお気になさらずに。」

でもなんか今回は予定たててるみたいでさ、待ち合わせ時刻まで指定してあって。
だいたいいつも遅刻してくるのはあいつなのに笑えるよな。

「ですね。あ、お茶あたらしく入れますね。」
「あ、わるいな。」
「いえいえ、続けてください。」

あいつ、いつも無茶苦茶なことばっかするだろ?
やっぱり遠大な計画立ててるんだろうな… あぁ、今から恐ろしい。

「でも楽しみなんですね、分かります。」
「えっ、いや、べつにっ」
「どうぞどうぞ、分かってますからね。」

今日イギリスに帰ってから、アメリカに飛び立つ予定ですか?
あ、まぁそうなるかな。
日本から、直接アメリカへ飛んだらどうですか?
いいのか?
どうぞどうぞ、泊まっていって下さい。
今が旬ですから、夕飯は筍ご飯にしますね。
せっかくですから、日があるうちに布団も干しておきますか。
菊がよっこいしょと独特の掛け声で立ち上がる。

「長いフライト、ご苦労様です。畳でシエスタ、なんてどうですか?」

すっと座布団をまくら代わりに渡される。
昨日まで予定空けるのに働き詰めだったし、少しはいいか。
縁側から部屋へともどり、程よくぽかぽかした畳にごろん。
床に寝る、というのに最初は驚いたこともあったっけ…
土足じゃないし、これだけ綺麗好きなら全然問題ないよな…
うつらうつらしながら思う、菊のおもてなしっていうのは完璧だなぁと。
あいつ、大丈夫なのか。あぁ、眠いけど今更不安になってきた。
瞼はとろんと重たくなって、まるくなって眠る。

「おやおや。やはりお疲れでしたか。」

しばらくして布団をもってきた菊の声が、すごく遠くから聞こえた。
そっと顔にかかった前髪をふわりと撫でてから、起こさないようにそっと。

「夕刻には起こしますね、アーサーさん。」




心地よい心配りと楽しみな予定、いい夢が見れそうな午後三時。




「と言うわけで、成田発でそちらに向かうそうです。」
「わかったんだぞ…」
「妬かないで下さいよ。こっちでたっぷり寝かしとくんで、あとは貴方次第です。」
「な、ななななんのことだい!?」
「…御好きに解釈して頂いて結構です、では。」
「ちょっと待ってくれよ、菊―!!」