夜明けのコーヒー
「待っ… アル、 …はぁ、んっ」
「さっき“早く”なんて煽ったのは君だろう?」
「いっ、た けど… あぁっ!」
目がぼんやり覚めたらちょっと擦って、起きようかと思ってやめた。
腰痛ぇ、喉痛ぇ。…何かだるい。
しかも原因の奴が隣にいない。
別に寂しいとかじゃないが、普通はいるだろ一緒に。
もそもそとシーツにくるまったまま体育座り。
カーテン越しに朝日を感じたが、開けに行くのも面倒だ。
ベッドボードの目覚ましを見るとあと十五分でアラームがなる時刻。
まぁいいか。
俺の家の違ってスプリングのよく効いたベッドにもう一度寝転がった。
「アーサー、君はいつまで寝てるんだい?」
「あ゛?」
眼を開けると天井とアルが見えたから返事をしたのに声が上手くでない。
自分でも分かるぐらいだからアルからしたらもっとおかしかったんだろう。
くしゃりと俺の髪を撫でながらくすくす笑った。
「朝から不機嫌だね。」
「お前のせいだ、ばかぁ」
「半分は君のせいだろ?」
あんまり君が可愛いく誘うから、なんて言いやがって!
恥ずかしくなって顔もきっと真っ赤になってるから、もう一回シーツに頭から潜りこむ。
もそもそもそもそ…
自分が何やったかなんて知るかばかぁ!
「アーサー、アーサー。 …何拗ねてるんだ?」
「拗ねてねー。」
「今日はせっかくコーヒーいれてきたのに。俺が早起きしたんだぞ!」
冷めるじゃないか、まったく。
アーサー、アーサー。
…シーツって全然役に立たない。
優しい声がどんどん通り抜けてくる。
俺は、昔からこいつのお願いに敵わない。
「しっかたねぇなぁ、今後は紅茶にしろよ!」
乱暴にシーツを捲ってガバッと起きる。
そんな俺を覗き込む目は一瞬だけ不安そうな目をしてて。
でも俺の言葉を聞くと同時に嬉しそうに細められた。
「いや、コーヒーじゃなきゃダメなんだ。」
「…なんでだよ。」
まぁいいからほらもって。
渡されたのはティーカップでもコーヒーカップでもない白いマグカップ。
両手で持つと、ちょうどいい暖かさが手のひらから身体中に広がっていく。
「夜明けのコーヒーって知ってるかい?」
「なんだよそれ。」
菊の原稿を手伝いに行ったんだけどさ、その時菊が描いてた話の題名なんだよ。
ベッドの端に座ってアルもコーヒーを啜る。
だから音は立てるなって!
「わかったってば…。」
「で、題名だったから何だよ?」
ベッドから起きてアルに並ぶ。
俺はワイシャツしか羽織ってないけどその辺は気にしない。
昨晩脱がした奴が悪い。
焦げた薫りが湯気になって鼻をくすぐる。
…コーヒーなんて、久しぶりだ。
水面に眉間に皺を寄せた俺が写った。
『コーヒーは地獄のように黒く、死のように濃く、恋のように甘くなければならない。』
何処だったか、トルコ辺りの諺だったはずだ。
コーヒーは俺にとって正しく諺通り。
独立戦争からの苦味が全部溶けだした深い色。
今は忘れよう、コーヒーに喉に流し込んだ。
俯いている俺をアルの空色が覗き込む。
「一緒に夜明けのコーヒーを飲むっていうのは…」
一夜を共にした、って意味なんだぞ。
「…は?」
『是非ともアーサーさんに夜明けのコーヒーを飲ませてあげて下さい!』
って菊のあのキラキラした目で言われてさ。
だからインスタントじゃなくてちゃんと入れたんだ。
なのに君あんまり喜んでくれないじゃないか。
…唇を尖らせて拗ねるようにぶぅぶぅ言うアルは、いつまでも俺の弟で。
でかい図体で俺に凭れて甘えてくる。
どんなに大きくなったって、甘えられるのに俺は弱いんだ。
「べ、別に嫌じゃないんだからな! …ありがと。」
嬉しかったよ、って。
嗚呼、言っちまった。
とたんに何だか恥ずかしくなる。
カップをベッドサイドにゴンと置いて、真っ赤だろう顔を隠すためシーツに潜る。
のにすぐにまた剥がされて。
「弟じゃなくて、君の恋人だから。労るのは当然だろ?」
「ぅ…、恥ずかしいこと言うなばかぁ!」
怒鳴る唇は楽しそうに笑う弟に塞がれた。
こんな意地悪く笑う顔なんか昔はしなかったくせに。
嗚呼、眼鏡が邪魔だなと思いながら舌を絡めるとコーヒーの吐息。
野性味溢れるキリマンジャロはキスの次を予感させる。
「アーサー、 …しよ?」
「待っ… アル、もう朝だっ」
「またコーヒーいれるからさ、いいだろ?」
「よ、くなあぁ… ふぁっ」
そんなモーニングコーヒー
とりあえず腰が痛い、揉め。
あぁ分かったぞ、ここら辺かい?
あ゛ー、きもちぃー。
アーサー。君、年寄りくさいぞ。
っんだと、この… ふぁ、んくっあ、アル、…やっ
ENDLESS
はいはいバカップルバカップルwww
って言うのが書きたかったので書いてしまいました。
連休とかこいつらはずっとベッドでいちゃいちゃしてればいいよ。
|